副社長の一目惚れフィアンセ
9.ただ、愛されたかった
ナオは1日入院し、その後自宅療養となった。

問題はまだ片付いてはいないけど、あと3日ほどの自宅療養は絶対だと医師に厳しく言われた。

そのくらい、ナオの身体はボロボロだったということだ。

ナオは仕事が心配なようで、家にいてもベッドでゆっくり眠っていてはくれない。

見兼ねた私はソファで膝枕を作り、ナオをコロンと横にする。

不思議なことに、そうするとナオはおとなしく気持ちよさそうに目を閉じるのだ。

まるで猫みたいで、そんなナオの髪をなでるのがたまらなく嬉しい。


だけど、こちらを見上げたナオは私の表情を窺うように言う。

「もう治ったから明日から会社に行っていいよな?」

今朝退院してきたばかりなのに、この調子じゃ過労死まっしぐらだ。

「ダメだよ。もう少し休んで」

ナオは不満げな表情だ。きっとやらなければいけないことがたくさんあるんだろう。

だけど、できれば今は仕事のことは忘れていてほしい。
そう思って話題を振った。

「ねえ、ナオ。魔法って催眠術みたいな感じってこと?
私、本当にナオのこと忘れてたよ」

ナオは腕を額に乗せて、ふっと小さく口元を緩めた。

「…多分俺じゃない。詩織の魔法だ」

「え…?」


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