副社長の一目惚れフィアンセ
『もーあんたはっ仕事と詩織の誕生日とどっちが大事なの?』
「どっちがって…」
『仕事くらい休みなさい。詩織のためなのよ!?』
仕事くらい…?
心を支えていた何かがポキッと折れる音が、確かに私には聞こえた。
鳴き続けて寿命を終える蝉のように。
光にたかって力尽きる羽虫のように。
ひとつの感情が今死んでいくのを感じた。
お母さんに愛されたいと願う感情。
私が唯一お母さんに認められていると思っていたこと…
天星製薬に採用されたことだけが、ここで働いているということだけが、私が唯一誇れることだった。
だけど、私のそんな思いすらもお母さんは簡単に否定してしまった。
お母さんには、そんなことよりも詩織のほうがずっと大事だった。
私は自分の誕生日にお母さんから電話をもらったことすらないのに。
心配そうに私の手を握るナオの手を、ぎゅっと握り返した。
目をつむって、すうっと深呼吸をして心を落ち着かせる。
大丈夫。だって今、隣にはナオがいてくれる。
『明里』を心から愛してくれる人が、ここにいる。
「どっちがって…」
『仕事くらい休みなさい。詩織のためなのよ!?』
仕事くらい…?
心を支えていた何かがポキッと折れる音が、確かに私には聞こえた。
鳴き続けて寿命を終える蝉のように。
光にたかって力尽きる羽虫のように。
ひとつの感情が今死んでいくのを感じた。
お母さんに愛されたいと願う感情。
私が唯一お母さんに認められていると思っていたこと…
天星製薬に採用されたことだけが、ここで働いているということだけが、私が唯一誇れることだった。
だけど、私のそんな思いすらもお母さんは簡単に否定してしまった。
お母さんには、そんなことよりも詩織のほうがずっと大事だった。
私は自分の誕生日にお母さんから電話をもらったことすらないのに。
心配そうに私の手を握るナオの手を、ぎゅっと握り返した。
目をつむって、すうっと深呼吸をして心を落ち着かせる。
大丈夫。だって今、隣にはナオがいてくれる。
『明里』を心から愛してくれる人が、ここにいる。