副社長の一目惚れフィアンセ
「明里の記憶は大きく間違ってるんだ。
明里も詩織も、顔は全然似てないのに、やんちゃで明るくて、同じ性格の姉妹だなって思って笑った記憶がある。
詩織が亡くなってからの環境のせいで、明里はいい子を演じざるをえなくなったんだろうけど、もうその必要もない。
俺の前では、素の明里でいいんだよ」

手を広げてやわらかく微笑むナオに、胸が熱くなる。

体当たりするように飛び込んだら「おっと」とナオはソファに倒れ込んだ。

「…ありがとうナオ」

「いつか子どもができた時、明里に似たら、無邪気で明るくてやさしい子になる。そんな日が来るのが楽しみだな」

ナオの穏やかな声が、また涙を誘う。

不安ばかりだった未来に光がさすように、そんな日が来るのが、私も待ち遠しくなった。


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