副社長の一目惚れフィアンセ
夜10時を過ぎて、扉が開く音がした。

「ただいま」

「おかえりなさい」

ナオの目元が疲れて見える。

だけど、ナオは私の心配を察したように明るく微笑んだ。

「大丈夫だ。慣れてきたし、身体もつらくない」

仕事の忙しさに慣れるのって、あんまりいいことじゃないと思うんだけどな…


莉乃さんの手紙のことはナオには言えない。

今度はコーヒーを頭からかけられるかもしれないけど、今はナオの心配を増やすわけにいかない。

黒岩さんのことも、夏川さんの様子では何か裏がありそうだ。

聞けるようなら今度夏川さんに聞いてみよう。


早々にベッドに入るナオは「隣にいて」と私を呼んだ。

最近のナオがいつもより甘えん坊なのは、やっぱり疲れて弱っているからなんだろう。

私にできるのはこのくらいしかない。

まだ本調子じゃないナオを少しでも癒せるなら、私にとってそれはとても嬉しいことだ。

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