副社長の一目惚れフィアンセ
私は、莉乃さんがナオのことを本気で好きなんだと思っていた。
だからこそパーティーの時もあんなに怒ったのだと。
こんなふうに呼び出したのも、ナオを諦められないからなんだと。
だけど違うんだ。
この人にとって相手は重要じゃない。
社長夫人になるという自分の野望を叶えるために利用する道具でしかない。
キッと莉乃さんを睨みつけた。
「莉乃さんに直斗さんは譲れません。
政略結婚の話が出ていても、莉乃さんが相手なら私は婚約破棄には応じません」
莉乃さんは大袈裟に肩を上下させてため息を吐く。
「やっぱり交渉は決裂ね。まあ仕方ないわ。性格に難ありだけどあの人でも…」
そこまで言って莉乃さんは、言い過ぎたと言わんばかりに口をに手を当てた。
「あの人って誰のこと…?」
莉乃さんはふっと笑って、誰でしょうね、と答えを言う気のないクイズのような言い方をした。
「ちょっとややこしくなりそうね」
莉乃さんは伝票を持って席を立ち、意味深な言葉を残して颯爽と去って行った。
取り残された私は冷めたコーヒーを見つめながらただ茫然とするだけ。
『あの人』
この前一緒にいた黒岩さんのことが浮かんだけど、黒岩さんと結婚したところで莉乃さんには何のメリットもないはずだ。
他に副社長候補がいるということだろうか。
それが誰なのか、私には見当もつかない。
だからこそパーティーの時もあんなに怒ったのだと。
こんなふうに呼び出したのも、ナオを諦められないからなんだと。
だけど違うんだ。
この人にとって相手は重要じゃない。
社長夫人になるという自分の野望を叶えるために利用する道具でしかない。
キッと莉乃さんを睨みつけた。
「莉乃さんに直斗さんは譲れません。
政略結婚の話が出ていても、莉乃さんが相手なら私は婚約破棄には応じません」
莉乃さんは大袈裟に肩を上下させてため息を吐く。
「やっぱり交渉は決裂ね。まあ仕方ないわ。性格に難ありだけどあの人でも…」
そこまで言って莉乃さんは、言い過ぎたと言わんばかりに口をに手を当てた。
「あの人って誰のこと…?」
莉乃さんはふっと笑って、誰でしょうね、と答えを言う気のないクイズのような言い方をした。
「ちょっとややこしくなりそうね」
莉乃さんは伝票を持って席を立ち、意味深な言葉を残して颯爽と去って行った。
取り残された私は冷めたコーヒーを見つめながらただ茫然とするだけ。
『あの人』
この前一緒にいた黒岩さんのことが浮かんだけど、黒岩さんと結婚したところで莉乃さんには何のメリットもないはずだ。
他に副社長候補がいるということだろうか。
それが誰なのか、私には見当もつかない。