副社長の一目惚れフィアンセ
プルルル プルルル プルルル


次の日の午前中、内線電話がかかってきて、電話を取ったのは私だ。

「はい、総務課福利厚生係、高野です」

『明里さん?おはようございます。秘書の夏川です』

早口の夏川さんに、何か起きているんだということはすぐに察しがついた。

「どうされたんですか」

「詳しいことは私にもよくわからないんです。
とにかく、15階まで来ていただけますか?
お待ちしておりますので」

「はい、すぐに」

漠然と嫌な予感が走る。夏川さんが私を迎えに来る時間すら惜しいほどの何かがあるのだ。


15階でエレベーターを降りたら、夏川さんが手を前に重ねて立っていた。

「お待ちしておりました。こちらへ」

夏川さんは早足で歩いていき、社長室をノックをした。

「社長室…ですか?」

夏川さんが答える間もなく、中から秘書の女性が出てきた。

「私はここまでしか入れませんので」

と夏川さんは頭を下げた。


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