副社長の一目惚れフィアンセ
ザー ザ、ザー


小さなノイズが混じるのは車を運転しながらだからだろうか。

ウィンカーらしき音も拾える。

だけど、密室のおかげで声ははっきりと聞きとれる。


『…それで?その後どうなってるの?』

『少しずつ身体を弱らせて死に至らせるような薬を探しているんだ。だが、調べてみてもなかなか難しい』

『直斗さんを殺す気なの?』

『婚約パーティーまで済んだ以上、他に手はないだろう。
だけど、突然死となれば司法解剖になるかもしれない。
直斗はまだ若いからなおさらな』

『私はそんなことに関わって事情聴取なんか受けるのはごめんだわ。
やっぱり、私が直斗さんと結婚出来ればベストね』

『お前だって見ただろう。直斗はあの凡人女に夢中だ。
副社長の座につくのはどう考えても俺だ。
将来の社長夫人になりたいなら、俺がうまい計画を考えるのを待ってろ』

『私は結婚相手なんてどっちでもいいわ。
でも物騒な計画はやめてちょうだい』


ピッ

そこで途切れた会話とノイズ。

あまりの恐ろしさに、みんな声も出ずにただ茫然とした。





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