副社長の一目惚れフィアンセ
樺沢さんは少し声を震わせながら、ゆっくりと口を開く。

「これは婚約披露パーティーの何日か後の日付で録音されているものです。
莉乃、いざというときに、真司さんを脅すために使おうとでも思っていたんだろう?」

樺沢さんの低い声に顔をそむける莉乃さんは真っ青だ。

「莉乃!お前…っ」

「キャッ」

「おい!やめないか真司!」

莉乃さんに掴みかかろうとした真司さんを社長が止めに入った。

真司さんは「くそっ」と吐き捨てて、貧乏ゆすりをしながら歯ぎしりをした。

社長はわなわなと身体を震わせ、ただ真司さんを見つめている。

「真司…お前、直斗を殺そうだなんて…」

心臓がバクバクと嫌な音を立て、鳥肌が立った。

異物混入事件があったから、真司さんは会社の損失を埋めるためという名目で、莉乃さんと結婚して副社長になるチャンスを得たのだ。

つまりは、異物事件がなかったらナオは殺されていたのかもしれない。

常にナオの近くにいた真司さんに、方法さえ見つかれば、ナオを殺すのは容易かったはずだ。



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