副社長の一目惚れフィアンセ
「莉乃、今のお前をどこかに嫁がせることは、樺沢家の恥にしかならない。
社長夫人になりたいだなんておこがましいにもほどがある。
お前は当分の間、頭を冷やすために自宅謹慎だ」

「そんな…」

魂を抜かれたように、だらんと肩を落とし、一点を見つめる莉乃さんは、もう私の知っている気の強い莉乃さんじゃなかった。

そしてその隣にいる真司さんも青い顔をしている。

さっきまでの自信たっぷりの表情は脆く崩れ去り、この世の終わりのような顔をしている。

「水嶋社長。婚約披露パーティーであれだけご迷惑をおかけしたあとも、変わらずお付き合いを続けてくださっていたことにはとても感謝しております。
微力ながら、金銭的な援助はさせていただきたいと思っております」

「樺沢さん…助かります。ありがとうございます」

「ですが、ボイスレコーダーの件に関してはなんとお詫びしたらいいか…莉乃がそんな計画に関わっていたなんて」

「いえ、そのボイスレコーダーがあったからこそ真司の計画が明るみに出たんです。
莉乃さんはその計画をただ聞いただけですから、あまり気に病まないでください」

「本当に、ありがとうございます」

樺沢さんは大きく頭を下げた。


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