副社長の一目惚れフィアンセ

「明里、詩織はね、亡くなる１年前に、突然生命保険に入りたいって言いだしたんだ。
若いうちにこんなに高い保険に入る必要はないと言ったんだが、詩織は頑として聞かなかった。
もし私が死んだら、お金は全部明里の幸せのために使ってあげてねって、何度も念を押して…
まるで、自分がもうすぐ死ぬことをわかっていたみたいに…」

お父さんは声を震わせ、堪えきれなくなったように涙を流した。


お姉ちゃん…なんで…？


お父さんは社長に向き合い、涙声で訴える。

「水嶋社長、この大きな会社から見れば、これは決して多い金額でないことはわかっています。
もちろん政略結婚をしたほうが、そちらのほうがメリットはずっと大きいでしょう。
ですが、直斗さんが今でも変わらずに明里を愛してくださるのなら…
明里の姉が妹のために遺したこのお金を、明里が直斗さんと幸せになるために、微力ながら役立てることはできないでしょうか？」



お姉ちゃん…