副社長の一目惚れフィアンセ

「明里」

「ん？」

ナオは後ろ手に何かを持っていて、穏やかな笑顔で私の前に差し出した。

それは以前見せてもらったことがある、お姉ちゃんの日記帳だ。

「前に言ったの覚えてるか？来るべき時が来たら見せたいものがあると」

そういえばそんなことを言われていた。

あの頃は色々なことがあって大変だったから、すっかり忘れてしまっていたけど。

ナオはパラパラとページをめくり、最後のページで手を止めた。


『直斗へ』と書いてある、今までのページよりずいぶん長い文章。

「…これ、私が読んじゃっていいの？」

「読んでほしいんだ。詩織もそれを望んでいたんだ」