副社長の一目惚れフィアンセ
「これから指輪を見に行こうか」

「えっ?」

「婚約指輪」

彼は当然のようにニコリと笑う。

…そうか。婚約するからには婚約指輪はいるのか。

車が向かった先は銀座だ。

ブランド店が立ち並ぶ通りで「どの店が好み?」と聞かれたけど、好みも何もない。

高級ブランドに興味はないし、足を踏み入れたことのない店ばかりだ。

「お任せします」とひきつった笑みを見せながら答え、あるブランド店に入った。

ガラスケースにはたくさんのジュエリーが並んでいる。

だけど、一十百千万……桁が…私の思っているよりも2,3桁多く、心臓が縮み上がる。

「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか」

黒いワンピースを着た中年の女性店員が出てきて、私たちに声をかけた。

「婚約指輪を探してるんです」

「それでしたらこちらに新作が数点ございます。
気になるものがあればお出ししますので」



< 38 / 203 >

この作品をシェア

pagetop