副社長の一目惚れフィアンセ
店員がおすすめだというものをいくつか出してくれて試着すると、白いライトに照らされてキラキラと輝いた。

きれいではあるけど、目利きなどできない私は、多分雑貨屋さんで売られている安い指輪と区別がつかないと思う。

私には不相応だと思うものばかりが並んでいる中で、あるリングに目がとまった。

「…あ、これ…」

ねじれた造りのリングに、メレダイヤがポイントでいくつか埋め込まれている。

シンプルで普段使いできそうだ。

「じゃあこれを。サイズ合わせてください」

「えっ」

「はい、かしこまりました」

ただ独り言を呟いただけなのに、あっさりとリングは決まってしまった。

副社長は値段も見ておらず、焦った私は思わず値札の桁を数えた。

眩暈がする。ダイヤは小さめだけど、値段は他のリングと大差ない。

こんなものを即決するなんて…

焦って声を潜めつつ彼に言う。

「ふ、副社長っこれすごく高いです」

「そんなことは気にしなくていい。明里をもらうには安すぎるくらいだ」

不意打ちの明里呼ばわりに胸が跳ね上がり、ドキドキしてしまって何も言えなくなった私は、されるがままサイズ合わせをされた。

< 39 / 203 >

この作品をシェア

pagetop