副社長の一目惚れフィアンセ
会計で副社長が出したのは、リアルで目にするのは初めてのカード。

ドラマでは見たことがあるけど、それを現実で持っている人って本当にいるなんて思わなかった。

マットブラックのカードに小さいダイヤ。ラグジュアリーカードというやつだ。

副社長なんだからもちろん稼いでいて当然だけど、私は本当にこんなすごい人の奥さんになるんだろうか。

今さらながらぶっ倒れそうだ。

「ラッピングは軽くで」

「はい、かしこまりました」

彼はそんな私の不安にも気づかない様子で、ラッピングされていくリングケースに満足げな表情を浮かべている。


「まだ時間も早いし、どこかに寄ろうか」
 
「はい」

副社長の言葉に頷き、そのまま車を走らせて晴海埠頭までたどり着いた。

洒落たデザインのオブジェが光を水面に落とし、橋のイルミネーションが彩りを添えて幻想的な空間を生み出している。

こんな定番のデートスポットのようなところに来たのは初めてだ。

車を降り、少し吹く風に髪を押さえながら導かれるように彼の後をついて進んだ。

「綺麗ですね」

「ああ。でも明里のほうが綺麗だ」

穏やかな気持ちで景色を見ていたはずなのに、副社長のそんな一言でまた心臓が騒ぎ出す。

なんでこの人はこんな言葉をさらっと言えるんだろう。

綺麗だなんて言われたことがないから、どう反応すればいいのかわからない。



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