副社長の一目惚れフィアンセ
彼はポケットからリングケースを取り出し、手際よくリボンをするっとほどいてリングを引き抜いた。

「本当はオーダー品にしたかったんだけど、それじゃ間に合わないから、既製品ですまない。左手を出して」

私の手をとったナオは、薬指にすっとリングを通す。

手を空にかざしたら、バックに見えるイルミネーションのせいか、店の白いライトに照らされていた時よりもずっと美しく輝いて見えた。

「似合うよ、明里」

「ありがとうございます。なんだか夢みたい」

ナオは私の右頬を包んでこちらを自分のほうを向かせ、やさしい目で見つめたあと、目を閉じてゆっくりと顔を近づけてきた。

妙にセクシーに見えるその顔をギリギリまで見届け、私も同じように目を閉じた。

重なった唇のやわらかさに幸せな気持ちが込み上げて、胸がいっぱいになる。


惹かれるどころじゃない。

私はきっと、この人のことが好きだ。



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