副社長の一目惚れフィアンセ
『ふ、副社長?婚約?明里、それマジで言ってんの?』

「マジで言ってる、と思う。自分でもまだ信じられないもん」

寝転がってスマホを耳に当てながら、左手を天井にかざす。

信じられないと言いながらも、これが事実である証拠は今もちゃんと薬指に光っている。

『はあ…すごいね。びっくりしたあ』

電話の相手は松木紗耶(まつきさや)。私の幼なじみだ。


小学4年の時、私の両親は離婚した。

離婚して今の実家がある平塚に移り住む前、徒歩数分のところに紗耶の家があり、小さい時から仲良しだった。

引っ越したあとも仲が良く、私の抱える事情を知っている2人のうちの1人だ。

ちなみにもう一人は紗耶の双子の弟、瀬名(せな)。

紗耶も瀬名も今は私と同じように都心に出てきて働き、それぞれ一人暮らしをしている。

…が、実は紗耶と瀬名は同じアパートの隣同士の部屋で暮らしているのだ。
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