副社長の一目惚れフィアンセ
届いたコーヒーをごくりと飲んで、「あつっ」とお冷やを飲み直しながら、瀬名は言う。

「おばさんには言ったんだろ?どんなだった?」

「詩織も喜ぶわよって。あんたは詩織と違って料理下手なんだから、愛想つかされないようにしなさいって」

「相変わらず、か」

ため息混じりに言って黙り込んだ瀬名。

少しして、瀬名は顔を上げて微笑んだ。

「まあ、明里が幸せならいいよ。
おばさんに認められたくて副社長夫人の地位を選んだとかじゃないんだろ?
それなら俺や紗耶は祝福するしかないから」

「…うん。ありがと」

「お前が笑ってられるのが一番いい。
お前の隣にいる奴がお前を幸せにしてくれるなら、それでいい」

瀬名がニカッと笑い、そのやさしさに涙が出そうになる。

だけど、場所が場所だ。ここで泣いたら瀬名が悪者のようになってしまう。

滲みかけた涙をなんとか引っ込めた。


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