副社長の一目惚れフィアンセ
3.婚前同居
翌週、ナオの仕事が落ち着いて、久しぶりに会えることになっていた。

社長への挨拶から10日ほど経っているから、久しぶりでドキドキしてしまう。

最初の日と同じように、緊張で胃が痛くなりながらも玄関前でナオの到着を待った。

だけど、車から顔を覗かせたナオの姿を見て、緊張よりも嬉しくなった自分がいた。

嬉しくて緩んだ頬を戻せなくなるくらいに。

「お疲れ様です。失礼します」

車に乗り込み、「お疲れ様」と明るい声で返してくれるナオに幸せな気持ちになる。

ナオが運転していてよかった。

こんなにニヤニヤしている自分を見られるのは恥ずかしいし、引かれてしまうだろう。

私の恋心は、いつのまにかこんなに膨らんでいたのだ。

単純にもほどがある。もっと恋愛に臆病な人間だったはずなのに。

「なかなか時間が取れなくて悪かった。しばらくはこんなに忙しくないはずだから」

「いえ、今日はお疲れじゃないですか?もしかして無理して来てくださったとか…」

「俺が会いたかったんだよ」

さらっと言われてしまった言葉が甘く胸の中に広がる。

「それよりも、敬語はやめてくれ。距離を感じて寂しい気持ちになる」

「あ、はい、ごめんなさい」

言ったあとにまた敬語だったことに気づいて、あ、と声を漏らしたら、ナオはクスクスと苦笑いをした。


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