副社長の一目惚れフィアンセ
リビングから続く2つのドアがそれぞれ部屋になっていて、廊下にも一部屋ある。

ひとつは寝室。ひとつはナオが仕事をしたりプライベートなものを置いている部屋。
余っている一部屋は真新しい状態で、そこを私の部屋にしていいと、ナオがコーヒーを淹れながら説明してくれた。

ナオは湯気の上がるコーヒーを二つテーブルに置いて、白いソファに座った。

隣に座るように促しているつもりなんだろう。
少しだけ顔を傾け、口角を上げてこっちを見ている。

控えめに腰を下ろすと肩を抱き寄せられ、ナオの唇が触れた。

この前の甘くてやさしいキスで終わるけど思いきや、今日のナオは違う。

唇を割って舌を入れ、私の背中と後ろ頭を掻き抱いて、貪るように舌を求める。

胸がぎゅーっと苦しくなるけど、それは苦痛だからじゃなく、彼をとても愛しいと…もっとこうしていたいと思うから。

離れる瞬間、2人同時に息が漏れる。

ナオは私の髪を撫でながら、色気の滲む瞳を向ける。

「DVなんてしないけど、このくらいは普通にするから。…嫌か?」

すっかり酔わされてしまった私は言葉も出ずにただ首を横に振って、ナオの肩にコツンと頭をつけた。

ナオは私の背をぎゅっと抱きしめる。

「早く君を、こんなふうに抱きしめたかった。好きだよ、明里」

私もきっと、こんなふうに抱きしめられたかった。

…だけとそんなことは恥ずかしくて言えなくて、手をナオの背に回し、シャツをきゅっと掴んだ。



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