副社長の一目惚れフィアンセ
この部屋で食べる、初めてのふたりでの夕食。
私はのんびり食べている場合じゃなく、そわそわしながらナオの様子をうかがう。
ナオはもぐもぐと口を動かしたあとに、小さく頷く。
「すごくおいしいよ」
ホッとしたけど、すぐにそれは不安に変わる。
引っ越して初めての手作り料理だし、もしかしたら気を遣ってくれているのかもしれない。
『あんたは詩織と違って料理下手だから、愛想つかされないようになんとか結婚まで持っていきなさいよ?』
お母さんの言葉が頭の中を回ってますます不安になる。
「…ホントに?おいしくなかったら正直に言って。
私は料理が下手くそだって言われたから」
私の顔がぎこちなく見えたのか、ナオが訝しげに問う。
「誰にそんなことを言われたんだ?」
「…母に」
「おいしいって思ったのは本当だ。そんなことを気にしながら毎日作ってたら参っちゃうだろ。
俺はじゅうぶん満足だ。気にするな」
「…うん」
ナオはやさしい。
きっとこの人は、食事がおいしくなくても『不味い』とは言わないだろう。
きっとなんでも食べてくれるのだ。
そういうやさしさがわかるから私が余計に心配になってしまうことを、きっと彼は理解できないだろう。
私はのんびり食べている場合じゃなく、そわそわしながらナオの様子をうかがう。
ナオはもぐもぐと口を動かしたあとに、小さく頷く。
「すごくおいしいよ」
ホッとしたけど、すぐにそれは不安に変わる。
引っ越して初めての手作り料理だし、もしかしたら気を遣ってくれているのかもしれない。
『あんたは詩織と違って料理下手だから、愛想つかされないようになんとか結婚まで持っていきなさいよ?』
お母さんの言葉が頭の中を回ってますます不安になる。
「…ホントに?おいしくなかったら正直に言って。
私は料理が下手くそだって言われたから」
私の顔がぎこちなく見えたのか、ナオが訝しげに問う。
「誰にそんなことを言われたんだ?」
「…母に」
「おいしいって思ったのは本当だ。そんなことを気にしながら毎日作ってたら参っちゃうだろ。
俺はじゅうぶん満足だ。気にするな」
「…うん」
ナオはやさしい。
きっとこの人は、食事がおいしくなくても『不味い』とは言わないだろう。
きっとなんでも食べてくれるのだ。
そういうやさしさがわかるから私が余計に心配になってしまうことを、きっと彼は理解できないだろう。