副社長の一目惚れフィアンセ
ベッドに戻って少し寝直したあと、コーヒーを飲みながらトーストをかじり、何をしようかぼんやりと考えた。

この広い部屋に一日中ひとりでいるのはまだ落ち着かない。

少し考えた末、大事なことを閃いた。

『詩織』———お姉ちゃんに婚約の報告をしようと思っていたのだ。

お母さんからすでに報告がいっているんだろうけど、私からもちゃんと報告したい。

…いや、お母さんがお姉ちゃんに私の話をすることなんかあるのかな。

もしかしたらお姉ちゃんはまだ何も知らないかもしれない。


お母さんに挨拶がしたいというナオに、なんとか理由をつけて断り続けていたら、そのうちにナオはその話をしなくなった。

不自然な私の態度に何かを察したのかもしれないけど、特に追及されることはないから、こちらからも事情は話していない。

お母さんはというと、最近電話をしてこないから、そのことに関して話す機会すらない。

いつまでもこのままではいられないのはわかっているけど、胃が痛くなるようなことはなるべく考えたくない。


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