副社長の一目惚れフィアンセ
結局それから1年後に両親は離婚して、町田の家にはお父さんと新しく奥さんになる人が住むことになり、私はお母さんと一緒に平塚のアパートに移り住んだ。


『詩織』の話ばかりするお母さんは、私と『詩織』を比べることが多くなっていった。

『詩織は中学のテストがいつも1位だったのに』

『詩織はバレー部で1年からレギュラーだったのに』

『詩織ならもっといい大学に入れたのに』

『詩織なら…』


つらくて泣きたい時は、わざわざ電車で1時間もかけて町田の紗耶たちの家まで行っていた。

だから紗耶と瀬名は私の苦しみを痛いほどに知っている。

肯定してくれる誰かの存在というのはとてもありがたいもので、ふたりがいなかったら、私は学校の屋上から飛び降りていたかもしれない。

本気でそう思う。



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