副社長の一目惚れフィアンセ
そのあと、紗耶と瀬名の家へ向かった。

ちょうど紗耶が実家に帰って来ているというから寄ることにしたのだ。

紗耶たちの家は高台からは20分ほど下ったところにある。

私が以前住んでいた実家の前を通り過ぎようとしたとき、中年の男性が車を洗っている姿が見えた。

ずいぶん白髪の増えた懐かしい背格好は、どう見てもお父さんだった。


「明里?」

私に気づいて先に声をかけてきたのはお父さんだ。

お父さんは嬉しそうに笑って私の元へ駆けてくる。

「久しぶりだな。元気にしてたか?」

「うん。お父さんは?」

「元気だけど、最近太っちゃってなあ。
歳だから健康には気をつけないとな」

苦笑いをしながら頬を掻くお父さんを見て、私もふふっと笑った。



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