副社長の一目惚れフィアンセ
「あんた、明里がここに来るって聞きつけて会いに来たの?向こうでも会えるのに」

「聞きつけてってなんだ。ストーカーか!いや、明里にはついこの前会ったんだんだけど、せっかくだから俺もしお姉のお参り行こうと思ってさ」

「…ありがと、瀬名」

「もちろん、明里がいると思ったから急いで来たんだけどね」

ペロッと舌を出す瀬名に、紗耶は呆れ顔だ。

紗耶と瀬名にとっても『詩織』はお姉ちゃんみたいな存在だった。

2人は『しお姉』と呼んでいて、私たち3人に補助輪なしの自転車の乗り方を教えてくれたのも、逆上がりの特訓をしてくれたのもお姉ちゃんだ。

だけど、2人がお姉ちゃんの思い出話をするたびに、私は首を傾げる。

私の中にある、何をやっても完璧なお姉ちゃんのイメージと、瀬名や紗耶がいう子供っぽくてちょっとドジな『しお姉』は全く違うのだ。


『明里にとってのしお姉の記憶が、おばさんのせいで塗り替えられてる気がする』

紗耶はそう言っていた。洗脳ってやつなんだろうか。

お母さんも嘘をついているわけじゃないだろうし、紗耶と瀬名もそれは同じこと。

何が正しいのか、もう私にもわからない。


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