副社長の一目惚れフィアンセ
ステージから見て人の多さに眩暈がした。

今この部屋にはざっと200人くらいはいるんじゃないだろうか。

『盛大じゃない』?どこがよ。

ナオを恨めしく思いながらも笑顔を崩すわけにいかず、ただ流れに身を任せるしかない。

「まずは直斗さんからご挨拶を」

スタンドマイクの位置を整えたナオは、緊張の色を少しも見せず話し始める。

「本日はお集りいただきまして、誠にありがとうございます。
この歳になって、ようやく運命の女性に出会うことができました。
挙式、入籍はまだ先になりますが———…」

ナオの挨拶が終わって一緒にお辞儀をし、拍手が飛んだ。

こんな挨拶、いつの間に覚えたんだろう。まさか即興じゃあるまいし…

私も挨拶をしなければいけないのかと思って死にそうなくらいドキドキしたけど、司会の進行は社長の挨拶へ移って心底ホッとした。

私は何もしていないけど、とりあえず大役は終わったようだ。



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