副社長の一目惚れフィアンセ
ナオが、必死に言葉を探す私の腰を抱く。

「梅野さん、明里は普通の家の出です。
僕が一目惚れをして口説いたんですよ」

「あらー。そうなのね。身分違いの恋、素敵ねえ」

梅野さんと呼ばれたその女性は、少女のように目をキラキラさせた。

本人の前で『身分違いの恋』と言ってしまうのは失礼な話だと思うけど、間違ってはいない。

彼女に全く悪気や嫌味はないんだということは表情を見ればわかる。

きっと彼女はとてもいい家柄の生まれで、『身分違いの恋』なんていうフレーズにうっとりしてしまったんだんだろう。

少し会話のやりとりをしたあと、梅野さんに会釈をして歩き出す。

「気にすることはない。自信を持って大丈夫だから」

「うん」

ナオのフォローに感謝しながら、添えた手をきゅっと握りしめた。


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