副社長の一目惚れフィアンセ
明らかに怒っているナオの低いトーンを気にもせず、莉乃さんは興奮して続ける。

「本当なら、今日ここに立つのは私のはずだったのよ。なのに…！！」

「おい！莉乃！！お前何してるんだ！！」

恰幅のいい白髪交じりの男性が重そうな身体を揺らしながら走ってきた。

どうやら莉乃さんのお父さまのようだ。

「ここに立つのは私のはずだった、ってどういうことだ。
お前は一体何を…」

「ふんっ」

子どもみたいにツンと顔をそむける莉乃さんにため息を吐きながら、男性はこちらを見た。

「申し訳なかった、直斗くん。明里さんも…」

びしょ濡れの私を見て、男性は八の字に眉を寄せ、再び大きく頭を下げて謝った。

「本当に申し訳ない。なんとお詫びしていいか…」

「いい気味だわ」

「莉乃！！！」

コツコツとヒールを鳴らして扉を出て行く莉乃さんに、男性は声をあげた。



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