副社長の一目惚れフィアンセ
「どうした。一体何があったんだ?」
社長が騒ぎを聞きつけてやってきた。
当然だけど、酔っていたこの前とはずいぶん顔つきが違い、状況が読めずに困惑している様子だ。
「水嶋社長、娘が大変無礼なことをしてしまいまして…本当に、申し訳ありません」
「一体何があったんですか。樺沢(かばさわ)さん…」
さっきまで和やかだったはずの会場はピリッとした空気に変わっていて、みんなが社長たちの様子をうかがっている。
「…明里、とにかく着替えよう」
ナオが私の耳元で声を潜める。
「皆さん、主役不在になりますが、もう少しパーティーを楽しんでいってください」
明るい声でそう言って私の背に手を添え、扉の外へ出た。
外にはタオルを持った黒岩さんが待っていた。
「上の1205号室をお使いになってください。着替えも今早急に取り寄せていますので」
「助かる」
さすが黒岩さん。副社長の第一秘書を務めるだけある。
「莉乃さんは確かに婚約者としてピックアップされていましたが、ご本人にはおろか、お父上にも正式な話はいっていなかったはずです。
どうして彼女は知っていたのか…」
「…いや、過ぎたことはもういい。彼女はそうとう酔っていたしな」
渡されたタオルでナオが私の頭を遠慮気味に拭いてくれた。
髪型が崩れないようにしてくれているんだろうけど、髪を洗ったらこの髪型に戻すことはできない。
白ワインでよかった。
赤ワインだったら顔が血まみれのようになっていて見るも無惨だったかもしれない。
それこそ『オペラ座の怪人』の惨劇のようだ。
社長が騒ぎを聞きつけてやってきた。
当然だけど、酔っていたこの前とはずいぶん顔つきが違い、状況が読めずに困惑している様子だ。
「水嶋社長、娘が大変無礼なことをしてしまいまして…本当に、申し訳ありません」
「一体何があったんですか。樺沢(かばさわ)さん…」
さっきまで和やかだったはずの会場はピリッとした空気に変わっていて、みんなが社長たちの様子をうかがっている。
「…明里、とにかく着替えよう」
ナオが私の耳元で声を潜める。
「皆さん、主役不在になりますが、もう少しパーティーを楽しんでいってください」
明るい声でそう言って私の背に手を添え、扉の外へ出た。
外にはタオルを持った黒岩さんが待っていた。
「上の1205号室をお使いになってください。着替えも今早急に取り寄せていますので」
「助かる」
さすが黒岩さん。副社長の第一秘書を務めるだけある。
「莉乃さんは確かに婚約者としてピックアップされていましたが、ご本人にはおろか、お父上にも正式な話はいっていなかったはずです。
どうして彼女は知っていたのか…」
「…いや、過ぎたことはもういい。彼女はそうとう酔っていたしな」
渡されたタオルでナオが私の頭を遠慮気味に拭いてくれた。
髪型が崩れないようにしてくれているんだろうけど、髪を洗ったらこの髪型に戻すことはできない。
白ワインでよかった。
赤ワインだったら顔が血まみれのようになっていて見るも無惨だったかもしれない。
それこそ『オペラ座の怪人』の惨劇のようだ。