ぶぶ漬けでもいかが? 〜口は災いの元〜
始さ〜ん?
お仕事中毒の社長さま。
アナタは確かバレンタインにわたしの想いを受け入れて、わたしはアナタにおいしくいただかれて、恋人同士になりましたよね?
「社長」
「なんや?」
パソコンから目も上げやしねぇ。
「デート行きませんか?」
「忙しいな」
「御所の近くに美味しいイタリアンできたんですけど」
「ほうか」
「わたしの大好きな美味しいイタリアンですよ?」
「良かったな」
眼鏡のブリッジを左手の人差し指でスイっと上げて、カタカタとパソコンを打ち込む。
「東雲、先月の各店舗の売上データは?」
「今朝経理からあがってきたんでプリントアウトしてそこに」
机の上のクリアファイルを指さすと、すかさず取り上げて中身を確認している。
可愛いミカコちゃんの誘いは華麗にスルー。
冷凍庫男は今日もお仕事の虫。
「・・・あんなにじっくりこってりねっとりしつこくエッチしたクセに性欲はほかしてしもたんですか?」
書類がバサバサと音を立てて落ちた。
お?
動揺した?
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