ぶぶ漬けでもいかが? 〜口は災いの元〜


「・・・・・・ミカコ」




呼ばれる声に温度が加わったようで嬉しい。

後ろ頭を撫でられて気持ち良さに猫のように目を細める。



ちゃんとそれなりに甘い恋人同士のようになったかも。


「30過ぎで枯れてるのかもとか思ってごめんなさい。始さん、オッサンやからイチャイチャすんのもきっと気恥しいんやわって思ってーーーー」



「・・・・・・ミカコ」



顎に指をかけられ、上向きにされて視線が絡む。


何故か背中を駆け上がる悪寒。



「・・・30過ぎはオッサンと違う。お前今世界中の30過ぎ男を敵にまわしたぞ」



低い声で凄まれた。



社長にまたソファーに沈められ昼休みの間ずっと、彼が枯れてないことをわたしは嫌というほど思い知らされた。



何度もごめんなさいをして、ようやく機嫌を直した社長。



「ジムでも通って体力つけとけ」



捨て台詞を吐き、ソファーから起き上がれないわたしを置いてけぼりにして、いつものように背筋をピンと伸ばし後ろ姿まで美しい社長は会議へと向かって行った。



口は災いの元だ。
うん、気を付けよう。




午後からの業務の間中、ダルい腰を擦りながらわたしは決心した。




※※※ 終 ※※※




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