冷酷な騎士団長が手放してくれません
◆
夜会など、一生好きになれないと思っていた。
愛想を振りまき他人に接触し、様子を見る。相手がどんな人間かを見極め、こちらの出方を考える。
ニールにとって、夜会は戦いだ。ここで得た交友関係をどう利用し、自国の利益に繋げるか。いわば、そういう場に過ぎない。
だが、今夜は違った。
ニールの隣でしとやかに歩んでいるソフィアが、彼の世界を塗り替えていく。
細い腰に手を添え、微笑みかければ微笑を返されるたび、気持ちが晴れやかになる。
薄桃色の唇から言葉が零れ、微かな吐息を感じるたび、幸福に包まれる。
濃紺のドレスの襟元から伸びた、白いうなじが視界に入るたび、どうしようもなく胸の奥が疼く。
自分が、こんなにも一人の女に執着できる人間だとは思っていなかった。
恋よりも文学。結婚よりも政務。
そんな人生を歩んできたし、おそらくこの先もそうなのだろうと思っていた。
だがあの満月の夜の晩餐会で、バルコニーに佇む彼女と出会ってから、少しずつニールは変わっていった。
初めは、ソフィアにもう一度会いたいと思った。
次に、もっと彼女のことを知りたいと思った。
そして、自分のものにしたいという欲望にかられた。
「ソフィア、疲れてはいないか?」
「大丈夫です、殿下」
「無理をするなよ。しんどくなったら、遠慮なく言え」
「ありがとうございます」
夜会など、一生好きになれないと思っていた。
愛想を振りまき他人に接触し、様子を見る。相手がどんな人間かを見極め、こちらの出方を考える。
ニールにとって、夜会は戦いだ。ここで得た交友関係をどう利用し、自国の利益に繋げるか。いわば、そういう場に過ぎない。
だが、今夜は違った。
ニールの隣でしとやかに歩んでいるソフィアが、彼の世界を塗り替えていく。
細い腰に手を添え、微笑みかければ微笑を返されるたび、気持ちが晴れやかになる。
薄桃色の唇から言葉が零れ、微かな吐息を感じるたび、幸福に包まれる。
濃紺のドレスの襟元から伸びた、白いうなじが視界に入るたび、どうしようもなく胸の奥が疼く。
自分が、こんなにも一人の女に執着できる人間だとは思っていなかった。
恋よりも文学。結婚よりも政務。
そんな人生を歩んできたし、おそらくこの先もそうなのだろうと思っていた。
だがあの満月の夜の晩餐会で、バルコニーに佇む彼女と出会ってから、少しずつニールは変わっていった。
初めは、ソフィアにもう一度会いたいと思った。
次に、もっと彼女のことを知りたいと思った。
そして、自分のものにしたいという欲望にかられた。
「ソフィア、疲れてはいないか?」
「大丈夫です、殿下」
「無理をするなよ。しんどくなったら、遠慮なく言え」
「ありがとうございます」