冷酷な騎士団長が手放してくれません
重い沈黙が、二人の間に訪れた。俯くソフィアと、それを見下ろすニール。


流れる雲が月を覆い隠し、闇が深くなる。気後れしそうなほどに暗い部屋の中で、ニールがようやく口を開いた。


「君は、罪深い女だな」




スッと、ニールが身を寄せて来たのが分かった。異変に気づいたソフィアが顔を上げると同時に、両手をきつく掴まれる。直後、ソフィアは勢いよくベッドの上に押し倒されていた。


「自分が何をしたのか、全く分かっていないのか」


暗がりの中ソフィアを見下ろし、薄く微笑むニール。その笑みに秘められた悲壮感に、ソフィアははっと瞳を瞬いた。だが、瞬時に両手首をきつく掴まれソフィアは表情を歪める。同時に、ニールの唇が降って来た。


「んん……っ」


それは、普段のニールからは考えられないほどに荒々しいキスだった。ソフィアの唇を執拗にとらえ、離さない。ねじこまれた舌が、強引に熱を奪っていく。


「ああっ……」


息つく間すら与えられず、苦しさからソフィアは身をよじって逃げ出そうとした。だがニールが両手に力を込め、ソフィアを自由にはしてくれない。


ようやく離れた唇が、吐息を吐きながら首筋を降りていく。力尽きたソフィアの手首から離れたニールの手が、ウエストをなぞり胸の膨らみを掴んだ。






その瞬間、ソフィアの脳裏に光が弾けた。


光の中に浮かんだのは、緑あふれるリルべの湖畔でソフィアを見つめる、リアムのひたむきな青い瞳だった。
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