冷酷な騎士団長が手放してくれません
(なぜ……)


なぜ、今こんなことを思うのだろう。


疑問に思ったのも束の間、ソフィアの両頬を涙が伝う。


ソフィアの涙に気づいたニールが、首筋から顔を上げた。


涙で滲んだソフィアの視界に、我に返ったようなニールの表情が映り込む。





「すまない……」


ソフィアの乱れた胸もとを整え、流れる涙を拭うように、ニールが頬に口づけする。額を撫でる手は、微かに震えていた。


「取り乱してしまった。愚かだな……」


苦しげな笑みを浮かべながら、ニールはソフィアの隣に横になると、いまだ泣き止まないソフィアの髪を繰り返し撫でるのだった。






その晩、ソフィアの体には触れないまま、ニールは同じ部屋で一夜を明かした。


翌日になると、昨日のことが嘘のように、ニールはいつもの彼に戻っていた。
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