冷酷な騎士団長が手放してくれません
ニールが、驚いたように目を瞠る。


リンデル嬢も、涙で潤んだ目を見開いてソフィアを振り返っていた。


ソフィアは物おじせず、じっとニールを見つめる。決断に、迷いはなかった。







幾ばくかの間のあと、ようやくニールが口を開く。


「では、処罰はなしということでいいのだな」


「はい」


きっぱりとソフィアが言い切れば、ニールがうっすらと口角を上げる。いつもの彼らしい、余裕に満ちた笑みだった。


「君は、やっぱり心の奥が野蛮だな。どう出るのか、まったく予想がつかない」


微かに苦しげな表情見せたあと、ニールはリンデル嬢に言い放った。


「ソフィアがああ言っているから、今回の件は咎めない。だがこの先もしも何かあれば、今度は俺が容赦しない」


「かしこまりました、殿下……」


深々と頭を垂れたリンデル嬢の声は、涙で震えていた。





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