冷酷な騎士団長が手放してくれません
選ばれた騎士の中には、リアムもいた。


黒の細身のズボンに黒のブーツ、濃紺の服の上に鉄製の肩当と胸当を装着しているリアムは、遠目から見ても抜きんでて均衡のとれた体つきをしていた。


背丈は他の男たちよりも頭一個分は高いのに、体の線は細い。けれども決して貧弱ではなく、服の下には鍛え上げられた筋肉の気配を感じる。


煌々と輝く黄金色の髪に、見るものを射抜く鋭くも美しい青の瞳。


ニールはリアムを見るたびに、まるで吸い込まれるように彼の姿に見入ってしまう。年齢や身分などの世俗の見解を飛び越えた、神秘的な魅力。彼の一挙一動に釘付けになるのは、ニールだけではないだろう。


自然と、ソフィアの手に重ねた指先に力がこもる。


ソフィアは、無表情のまま舞台を見ていた。視線が、まるでわざとリアムを避けるかのように外れている。






「君に忠実な護衛も出るようだぞ。応援してやれ」


試すように、ニールは言った。だが、ソフィアはそこで予想外の返事をする。


「そのことなのですが、殿下。彼には、もう護衛をやめてもらおうと思っております」


ニールは驚き、ソフィアの横顔を見つめる。ソフィアは、感情を表に出すことなく言葉を続けた。


「彼は、今では大事な副騎士団長です。この国の発展のためにも、そちらに尽力すべきだと考えております。私の護衛でしたら、他にも務まる者がたくさんいますし」


「だが、彼は君の忠実な下僕なのだろう?」


ニールの問いかけに、ソフィアは小さく苦笑する。


「幼い頃の、ほんの戯れですわ。この年になってもそんなことを続けるのは、おかしいということにようやく気づきました」


そこで一端言葉を区切ったソフィアは、長い睫毛を瞬いたあとで、決意を固めたように言い切る。


「もういい加減、彼との縁は断ち切るつもりです」

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