冷酷な騎士団長が手放してくれません
「隣国同士がまさに戦争に突入しようとしているこの時期に、呑気に親善試合だと? 愚かしいにもほどがある!」
中折帽を目深に被り、薄汚れた衣服を身に纏ったその男は、観客席の真ん中で狂気じみた声を上げた。
「ハイネル公国の聖人たちが、平和ボケしたこの国の国民たちに、今こそ制裁を与えよう!」
男が甲高い声を絞り出したのと同時に、観客席のあちらこちらで男が立ち、懐に忍ばせた短剣を出した。そして、一斉に舞台へと駆け下りてくる。
ハイネル公国の組織による、テロ行為だ。ロイセン公国では数多のテロ事件が起こっているが、情勢の悪化に伴い、カダール公国も標的にされたのだ。
観客たちは悲鳴を上げながら、我先にと出口へ向かう。
舞台の端に控えていた騎士たちが事態に気づき、剣を手に立ち上がった。
先ほどまでニールを追い詰めていたリアムも、鋭い目を迫りくる男たちに向けている。
(しまった)
ニールは、ソフィアを特別観覧席に一人にしてしまったことを思い出す。そして、剣を手にしたまま颯爽とソフィアのもとへと駆け戻った。
「ソフィア、大丈夫か!?」
「殿下、ご心配はいりません」
驚きでいくらか顔色が悪いが、ソフィアは脅えてはいなかった。普段は大人しいが、いざという時は気丈な女だ。
闘技場内は、すでに乱闘騒ぎになっていた。舞台のあちらこちらで騎士たちとテロ集団が闘い、剣同士がぶつかり合う音と、逃げ惑う人々の声が絶え間なく響いている。
中折帽を目深に被り、薄汚れた衣服を身に纏ったその男は、観客席の真ん中で狂気じみた声を上げた。
「ハイネル公国の聖人たちが、平和ボケしたこの国の国民たちに、今こそ制裁を与えよう!」
男が甲高い声を絞り出したのと同時に、観客席のあちらこちらで男が立ち、懐に忍ばせた短剣を出した。そして、一斉に舞台へと駆け下りてくる。
ハイネル公国の組織による、テロ行為だ。ロイセン公国では数多のテロ事件が起こっているが、情勢の悪化に伴い、カダール公国も標的にされたのだ。
観客たちは悲鳴を上げながら、我先にと出口へ向かう。
舞台の端に控えていた騎士たちが事態に気づき、剣を手に立ち上がった。
先ほどまでニールを追い詰めていたリアムも、鋭い目を迫りくる男たちに向けている。
(しまった)
ニールは、ソフィアを特別観覧席に一人にしてしまったことを思い出す。そして、剣を手にしたまま颯爽とソフィアのもとへと駆け戻った。
「ソフィア、大丈夫か!?」
「殿下、ご心配はいりません」
驚きでいくらか顔色が悪いが、ソフィアは脅えてはいなかった。普段は大人しいが、いざという時は気丈な女だ。
闘技場内は、すでに乱闘騒ぎになっていた。舞台のあちらこちらで騎士たちとテロ集団が闘い、剣同士がぶつかり合う音と、逃げ惑う人々の声が絶え間なく響いている。