冷酷な騎士団長が手放してくれません
「ソフィア!!!」


ニールが呼んでも、彼女は振り向こうとはしなかった。


ソフィアがまっしぐらに駆けて行く先では、剣を手にしたリアムが三人の男と向き合っている。リアムほどの腕をもってしても一人で三人の相手をするのは手厳しいようで、その表情は険しい。


ニールは、はっとする。三人の敵に気を取られたリアムの背後から、剣を掲げて忍び寄る者がいた。鉄仮面をつけた、怪しい男だ。






「リアム、逃げてっ!!!」


ソフィアが叫ぶのと、鉄仮面の男が剣を振り下ろしたのはほぼ同時だった。


――キンッ!


間一髪滑り込んだソフィアの剣が、リアムの背中を狙っていた鉄仮面の男の剣を抑える。


だが、令嬢と男とでは力の差は歴然だった。男の剣に圧され、ソフィアは地面に激しく打ち付けられた。


「ソフィア様!!!」


ソフィアに気づいたリアムが、振り返り倒れ込んだ彼女を抱き起こした。そして、目の前の鉄仮面の男を憎しみに満ちた瞳で睨む。


ニールも従者から剣を受け取ると、舞台にひらりと飛び上がった。そして、リアムを狙っていた三人のうちの一人と剣を交え打ち倒す。他の二人は、事態に気づいた別の騎士達が応戦していた。





「殿下。ソフィア様を、早く安全な場所にお連れしてください」


ソフィアを片手に抱え、もう片方の手で剣を掲げながら、リアムが言った。その向かいには、例の鉄仮面の男が剣を構えている。


「分かった」


ニールはソフィアを抱きすくめると、舞台横へと飛び降りる。


(あの男は何だ……?)


何故、鉄仮面を付けている? 他のテロ組織の人員とは、様子が違う。それに、どうもリアムを集中的に狙っているように見えた。







< 140 / 191 >

この作品をシェア

pagetop