冷酷な騎士団長が手放してくれません
ソフィアの胸の奥が、じんと震えた。


違う、そうじゃない。


「大丈夫、あなたは特別だから」


毛布の隙間から、右手を差し出す。


「あなたは、私の忠実な下僕だもの……」






ソフィアは、下僕という言葉を、まるで逃げ道のように使っている自分に気づいた。リアムに本音を晒せないもどかしさに、心が嘆いている。


ソフィアの言葉に、リアムは優しく微笑んだ。そして差し出された右手に近づくと、忠誠のキスを落とす。


柔らかな感触が手の甲を介して全身に伝わり、ソフィアの胸を震わせる。


リアムは上着を脱ぐと、その下に着ていたシャツも脱ぎ捨てた。ほどよく筋肉のついた上半身が、オレンジ色の蝋燭の炎に映し出される。そしてロングブーツを片方ずつ脱ぐとベルトと剣を取り外し、まとめて床に置いた。


ズボンだけの姿で、リアムは毛布に手をかける。裸の胸が見えないように、ソフィアは両手を胸もとでクロスした。
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