冷酷な騎士団長が手放してくれません
二人で同じ毛布に入り、向かい合う。


ソフィアの額には、リアムの柔らかな前髪の感触がある。胸もとで交差した手の向こうには、厚い胸板の気配を感じた。


だが、互いの体温が毛布の中で一つになっても、決して肌と肌が触れ合うことはない。





瞼を伏せたリアムは、目と鼻の先にあるソフィアの瞳を見ようとはしなかった。


ソフィアは、リアムへの想いに気づきつつある今、幼子のようにリアムと容易く触れ合ってはいけないと思っている。そしてリアムもまた、ソフィアの心はニールに向いていて、これまでのように触れてはいけない存在だと思っている。


こんなに近くにいるのに、心は遠かった。


本当は、今すぐに触れて、優しい熱に溺れたい。


けれども、それは許されない行為なのだ。





こみ上げる想いに、ぎゅと胸が苦しくなる。視線を泳がせたソフィアは、ふとリアムの腕が震えているのに気づいた。


見れば、リアムの体は完全に毛布に入り切れていない。二人で入るには小さいのだ。よほど身を寄せない限り、二人とも完全にくるまるのは無理だろう。


「寒いの? もう少し、近づいていいのよ」


ソフィアが言っても、リアムは「いえ、大丈夫です」と頑なに拒んだ。


迷ったが、ソフィアは片腕で胸を隠すようにして、もう片方の手でリアムの手に触れた。


手を繋ぐくらいなら、友人同士でもする行為だ。






「これで、少しは温かい?」


微笑めば、青い瞳がようやくソフィアを見据えた。


「はい」


彼の洗練された微笑を見たのは、久しぶりのような気がした。



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