冷酷な騎士団長が手放してくれません
「だって、あの冷たい牢屋にリアムを一人になんか出来なかったもの」


ふてくされながら、ソフィアは言う。


「私たちは、二人で一つじゃない。出会った時からずっと」


リアムの青い瞳が、ソフィアの目前で揺らいだ。


「そうですね。あなたには、いつも助けられてばかりだ。本当は、俺の方が助けなくてはいけないのに」


「そんなことないわ。こうやって今、私を命がけで助けてくれてるじゃない」


繋がった手に、力がこもるのを感じた。


形の良い唇が、呼吸を整えるように僅かに開く。


「当たり前です。あなたは、俺の全てだから」






リアムの唇から放たれた言霊が、ソフィアの全身に浸透していく。胸が激しく慟哭した。


触れそうで触れない肌が、もどかしい。あの熱を、もう一度感じたい。


リアムの瞳を見つめるうちに、ソフィアは徐々に自分の理性が崩壊していくのを感じた。


吐息に惹きつけられるように、息が上がる。


気づけば二人は、どちらからともなく顔を近づけていた。





唇が触れ合った時、どうしようもなく泣きたくなった。


「ソフィア様……」


互いの存在を確かめるようなキスのあと、ため息のように呟くリアムの声を聞いた時も、どうしようもなく胸の奥が苦しくなった。


触れてはダメ。そう思うのに、再び顔を近づけてきたリアムに応えるように、目を閉じていた。


徐々に深まるキスの音が、切なさを伴って耳に届く。
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