冷酷な騎士団長が手放してくれません
絡み合う舌の感触に、体の奥が疼いた。


自分の胸もとを覆っていたソフィアの腕が、ほどけていく。


長いキスのあとようやく唇を離したリアムは、抑えきれないように荒い息を吐いて、ソフィアをきつく抱きしめた。


裸の胸と胸が重なる、初めての感触。リアムの体温に、体が溶けていく。


自分とは明らかに違う、リアムの筋肉質な胸。彼が男という生物であることを思い知らされ、羞恥心がソフィアを蝕んだ。





「リアム、だめ……」


「どうして?」


額と額をくっつけ、いつになく凄むようにリアムが訊いてくる。剥き出しの背中に触れたリアムの掌の熱によって、ソフィアの胸に歓びと罪悪感が同時に溢れた。


いたたまれなさに、ソフィアは涙目になる。


「あなたとは、もう以前と同じようには触れ合えないの……」


リアムの整った顔が、苦しそうに歪む。「どうして?」と再び問いかけた低い声は、その答えをもう分かっているようにも聞こえた。


「私はもう、あなたのことを男としてしか見れないから……」


今のソフィアには、その答えが精一杯だった。


――あなたのことを、愛してしまったから。


本当の想いを伝えれば、リアムは今以上に遠い存在になってしまう。ニールの妻となるソフィアは、果てしない絶望の中を生きなければならなくなってしまう。






だが、リアムは震えるソフィアを離してはくれなかった。


怒りを込めるかのように、よりいっそうソフィアをきつく抱きしめ、耳もとで囁く。


「俺はずっと、あなたのことを女としてしか見ていません」


リアムの指先が背中を流れ、ソフィアのくびれたウエストを滑る。
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