冷酷な騎士団長が手放してくれません
ドレスも下着も脱がされ、一糸まとわぬ姿になった時、猛烈な羞恥心がソフィアを襲った。


だが、体を隠そうとするソフィアの両手を、リアムはいとも容易くとらえた。そして恍惚とした表情で、ソフィアの全身に視線を這わす。


「あんまり、見ないで……」


「どうして? こんなにも美しいのに」


胸の膨らみの中心に落ちて来た唇の感触に、ソフィアは堪え切れず声を漏らして体をのけぞらせる。


するとリアムは我慢し切れぬように胸もとに顔を埋め、この十年間想いの丈を、甘い吐息とともにぶつけるのだった。





湖畔の風に木立が凪ぎ、夢中で互いを求める二人を見守るかのように、木漏れ日を揺らす。


リアムを体の中心に感じた途端、感じたことのない歓びがソフィアの体の芯から込み上げた。


今のソフィアには、分かった。


愛する人の全てを欲する、男女の気持ちが。


けれどもそれは決して卑しいものではなく、こんなにも愛しく、涙が溢れて止まないほどに尊いものだったのだ。






二人で幾度も嗅いだリルべの湖畔の風の匂いが、一つになった二人の熱い息とともに溶けた。


どんなに激しく互いを求めても、露に濡れた草の上で絡み合う、二人の指先は離れない。


互いの熱を感じながら、二人はいつまでも愛しい恋人の温もりを肌に焼きつけていた。
< 176 / 191 >

この作品をシェア

pagetop