冷酷な騎士団長が手放してくれません
翌日、リアムは騎士団の一行とともにアンザム邸を出発した。


「ソフィア様。リアム様は、私が必ずお守りしますので、ご安心ください」


リアムの従順な配下であるダンテは、出発の直前、ソフィアにそう言った。


「お願いね、ダンテ」


「は、命に代えても」






「リアム、気を付けて」


金色の刺繍の施された黒色の軍服に身を包み、腰から銀色の剣を提げたリアムは、見惚れるほどに美しかった。


「ありがとうございます、ソフィア様」


見る人全てを魅了する青色の瞳は、別れの間際までソフィアから目を離さない。


名残惜しそうにソフィアを見つめていたリアムだったが、やがて決意を固めたように手綱を引く。


嘶きとともに、リアムの馬は歩きはじめた。









馬に乗った一行は、リルべの民たちに見送られながら、青空の下に広がる広野の向こうへと消えて行った。


その先頭を行く金色の髪の美しき騎士を、ソフィアはいつまでも見送っていた。
< 177 / 191 >

この作品をシェア

pagetop