冷酷な騎士団長が手放してくれません
「お母様。申し訳ございませんが、ロイセン王からの申し出は、お断りさせていただこうと思っております」


マリアの動きが、一瞬にして凍り付く。


頭を垂れながら、ソフィアは怯むことなく先を続けた。


「私はカダール公国の王子様に婚約を破棄された、汚れた身。いずれはロイセン王となられる王太子様と、とてもではございませんが釣り合うとは思えません」


「何を言っているの……?」


マリアの声は、いつも以上に冷ややかだった。


「この度の求婚は、カダール公国の時とはわけが違うのよ。相手は、この国の王なのですから。あなたに、拒否権はありません。もちろん、私やお父様にも。王の命令は、何があろうと絶対なのです」


マリアの剣幕に、ソフィアは返す言葉を失う。王の命令は絶対。逆らえば、一族もろとも窮地に陥るだろう。ソフィアの決意がどんなに固かろうと、関係のないことなのだ。


それほどに王の力、ことに数多の国を束ねるロイセン王の力は強大であることを思い知らされる。
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