冷酷な騎士団長が手放してくれません
数日後、マリアに尻を叩かれるようにして、ソフィアはロイセン城に出向いた。
求婚を受けるかどうかはともかくとして、書面にて王に謁見するように命令があった以上、従わねばならない。
その日、ソフィアはマリアが特注で仕立てたドレスを着て、ロイセン王国からの迎えの馬車に乗り込んだ。ウエディングドレスを彷彿とさせるシルクベージュのそのドレスは、一見してシンプルだがレースや真珠によって細部まで緻密に装飾されている。
大きく開いた胸もとには、同質の生地でこしらえたバラのモチーフが飾られていた。清純さを彷彿とさせるドレスに合うよう、髪は敢えて纏められていない。耳の上に控えめに刺された真珠の髪飾りが、風の吹くままになびく蜂蜜色の髪の、持ち前の美しさを引き立てていた。
ロイセン城から寄越された馬車は、それは豪華なものだった。金の花模様の装飾が施された四輪馬車には、四頭の毛並みの良い白馬が繋がれていた。椅子にはふかふかのビロード生地が使われ、室内に漂うジャスミンの芳香が心を和ませてくれる。
やがて馬車は王都リエーヌに差し掛かる。幾重もの塔の伸びた壮大な白亜の城が、ソフィアの視界に浮き彫りになる。
(お会いするだけよ。王太子様も年上の私との結婚など望まれていないはずだから、何とかなるかもしれないわ)
幼い王太子が、ソフィアを見て怖がってくれればいいのに。あの人と結婚なんてしたくない! と駄々をこねてくれれば、こっちのものだ。
遠くそびえるロイセン城を眺めながら、ソフィアは祈るようにそんなことを思っていた。
求婚を受けるかどうかはともかくとして、書面にて王に謁見するように命令があった以上、従わねばならない。
その日、ソフィアはマリアが特注で仕立てたドレスを着て、ロイセン王国からの迎えの馬車に乗り込んだ。ウエディングドレスを彷彿とさせるシルクベージュのそのドレスは、一見してシンプルだがレースや真珠によって細部まで緻密に装飾されている。
大きく開いた胸もとには、同質の生地でこしらえたバラのモチーフが飾られていた。清純さを彷彿とさせるドレスに合うよう、髪は敢えて纏められていない。耳の上に控えめに刺された真珠の髪飾りが、風の吹くままになびく蜂蜜色の髪の、持ち前の美しさを引き立てていた。
ロイセン城から寄越された馬車は、それは豪華なものだった。金の花模様の装飾が施された四輪馬車には、四頭の毛並みの良い白馬が繋がれていた。椅子にはふかふかのビロード生地が使われ、室内に漂うジャスミンの芳香が心を和ませてくれる。
やがて馬車は王都リエーヌに差し掛かる。幾重もの塔の伸びた壮大な白亜の城が、ソフィアの視界に浮き彫りになる。
(お会いするだけよ。王太子様も年上の私との結婚など望まれていないはずだから、何とかなるかもしれないわ)
幼い王太子が、ソフィアを見て怖がってくれればいいのに。あの人と結婚なんてしたくない! と駄々をこねてくれれば、こっちのものだ。
遠くそびえるロイセン城を眺めながら、ソフィアは祈るようにそんなことを思っていた。