冷酷な騎士団長が手放してくれません
こちらを凝視している人々の中には、リアムもいた。太陽の光のようだと比喩される彼の髪色は、大勢の人の中にいても抜きんでて目立つ。


ソフィアには分かっていた。ニールが言うように、リアムはニールを睨んでいるわけではない。


リアムは、もともと目が鋭い。その上寡黙なため、目で他人を威嚇しているように勘違いされることがある。


リアムが見つめているのは、永遠の忠誠を誓ったソフィアだけだ。


ソフィアに何かがあった時、いつ何時でも駆けつけることが出来るよう、リアムは四六時中ソフィアを見ている。


リアムの視線を感じると、ソフィアは心底安心する。





ガヴォットが終わり、ワルツが流れ始めた。踊っていた人たちは次々にパートナーを変え始めたが、ニールはソフィアの手を離そうとはとはしなかった。


身を寄せ合った時、ニールが耳もとで囁いた。


「ところでソフィア嬢、アレクサンドル・ベルの新作に興味はあるか?」


「『獅子王物語』を書いた、アレクサンドル・ベル? 新作ということは、彼はご健在なのですか?」


「もちろん。彼の新作『仮面の王子』という話がそれは面白くてね。良かったら、今度の文学サロンに来ないか? 出版されるのはまだ先だが、特別な伝手で入手したんだ。ぜひとも、お貸ししよう」


ソフィアは、目を輝かせた。『獅子王物語』を書いた、アレクサンドル・ベルの新作? なんて魅力的なお誘いなのかしら。
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