冷酷な騎士団長が手放してくれません
どれくらい、時間が過ぎただろう。
思想家たちの激論を遮るように、貴族の一人がパンパン!と手を叩いた。
「思想の話はもういい。そろそろ、サロンの本来の目的である文学の話をしようじゃないか」
そうだな、と激論に疲れた様子の思想家たちも同意を見せる。
「何か最近、面白い本はないのか?」
「ミヒャエル・ブロンテは? 飛ぶように本が売れているそうじゃないか」
「ミヒャエル・ブロンテ? 恋愛小説など、女が読むものだ」
やいのやいのと意見が飛ぶ中、「あの~」と遠慮がちに手を挙げたのは、兄のライアンだった。
「最近、僕が気に入っていた本が出版禁止処分を受けまして。あの本の何がいけなかったのか、僕には分からないんです。どなたか、教えてくれませんか?」
「なんという題名だ?」
「『欲望の荒野』です」
「『欲望の荒野』か。たしか、書架のどこかにあったはずだ」
ニールが立ち上がり、応接室の書架を物色し始める。
「あった、これだ」
やがてニールは、書架から引き抜いた分厚い本を、テーブルの真ん中に置いた。
「どれどれ?」と貴族たちが立ち上がり、本をめくり始めた。ソフィアも、何の気なしに後ろから覗き込む。
出版禁止になるだなんて、黒魔術の方法でも書いてあるのかしら? と邪推してしまう。
だが途中で現れた挿絵を目にするなり、ソフィアは「きゃっ」と声を上げて口元を手で覆った。
そこには、裸の女の上に覆いかぶさる男の姿が描かれていたのだ。
思想家たちの激論を遮るように、貴族の一人がパンパン!と手を叩いた。
「思想の話はもういい。そろそろ、サロンの本来の目的である文学の話をしようじゃないか」
そうだな、と激論に疲れた様子の思想家たちも同意を見せる。
「何か最近、面白い本はないのか?」
「ミヒャエル・ブロンテは? 飛ぶように本が売れているそうじゃないか」
「ミヒャエル・ブロンテ? 恋愛小説など、女が読むものだ」
やいのやいのと意見が飛ぶ中、「あの~」と遠慮がちに手を挙げたのは、兄のライアンだった。
「最近、僕が気に入っていた本が出版禁止処分を受けまして。あの本の何がいけなかったのか、僕には分からないんです。どなたか、教えてくれませんか?」
「なんという題名だ?」
「『欲望の荒野』です」
「『欲望の荒野』か。たしか、書架のどこかにあったはずだ」
ニールが立ち上がり、応接室の書架を物色し始める。
「あった、これだ」
やがてニールは、書架から引き抜いた分厚い本を、テーブルの真ん中に置いた。
「どれどれ?」と貴族たちが立ち上がり、本をめくり始めた。ソフィアも、何の気なしに後ろから覗き込む。
出版禁止になるだなんて、黒魔術の方法でも書いてあるのかしら? と邪推してしまう。
だが途中で現れた挿絵を目にするなり、ソフィアは「きゃっ」と声を上げて口元を手で覆った。
そこには、裸の女の上に覆いかぶさる男の姿が描かれていたのだ。