冷酷な騎士団長が手放してくれません
恥ずかしさから、顔にみるみる熱がこもる。
「何だ、簡単なことじゃないか。出版禁止の原因は、アレだよ」
初老の貴族が、真っ赤になっているソフィアを、茶化したように指し示す。
「どうせ、ウブなご婦人たちの反感を食らったのだろう」
「しかし、この本は本当に素晴らしい本なのです」
能天気なはずのライアンだが、今日はいつになく真剣だ。
「男が女を愛する心理を、深く描いている。これほどまでに、愛についてを追求した本は、今までに見たことがありません。少々細かすぎる描写もありますが、厭らしくはない。愛している女の全てを欲し、それを描くことの、何がいけないのでしょう?」
ライアンの熱弁に、貴族たちは徐々に感化されていっているようだった。
「それもそうだな」「いや、しかし」と賛成と反対の声が混同している。
「言われてみれば確かにそうだな。裸婦の絵画は芸術と称えられるのに、裸の女の挿絵本は低俗と蔑まれる。おかしな話じゃないか」
声高に賛成の意見を述べたのは、ソフィアの真向かいに座っている口ひげを蓄えた男だった。確か、文学者だと紹介された気がする。
「女の体は素晴らしい」
文学者はつかつかとライアンに歩み寄ると、肩をがしっと抱いた。「おお、同士!」というように、ライアンが目を輝かせる。
「愛する女の体に触れ、全てを知りたがることの何が悪い。女の体は神秘。人類の希望だ。我々は思想を語り合ったり、戦をしたりすることよりも、女の体を愛でるために生まれて来たといっても過言ではない」
「何だ、簡単なことじゃないか。出版禁止の原因は、アレだよ」
初老の貴族が、真っ赤になっているソフィアを、茶化したように指し示す。
「どうせ、ウブなご婦人たちの反感を食らったのだろう」
「しかし、この本は本当に素晴らしい本なのです」
能天気なはずのライアンだが、今日はいつになく真剣だ。
「男が女を愛する心理を、深く描いている。これほどまでに、愛についてを追求した本は、今までに見たことがありません。少々細かすぎる描写もありますが、厭らしくはない。愛している女の全てを欲し、それを描くことの、何がいけないのでしょう?」
ライアンの熱弁に、貴族たちは徐々に感化されていっているようだった。
「それもそうだな」「いや、しかし」と賛成と反対の声が混同している。
「言われてみれば確かにそうだな。裸婦の絵画は芸術と称えられるのに、裸の女の挿絵本は低俗と蔑まれる。おかしな話じゃないか」
声高に賛成の意見を述べたのは、ソフィアの真向かいに座っている口ひげを蓄えた男だった。確か、文学者だと紹介された気がする。
「女の体は素晴らしい」
文学者はつかつかとライアンに歩み寄ると、肩をがしっと抱いた。「おお、同士!」というように、ライアンが目を輝かせる。
「愛する女の体に触れ、全てを知りたがることの何が悪い。女の体は神秘。人類の希望だ。我々は思想を語り合ったり、戦をしたりすることよりも、女の体を愛でるために生まれて来たといっても過言ではない」