冷酷な騎士団長が手放してくれません
振り返れば、いつの間にかニールが立っていた。
「殿下……? サロンは、大丈夫ですの?」
「俺がいなくても白熱してるから、こっそり抜け出してきた」
ソフィアが驚けば、ニールは微笑を携えながら隣へと歩んで来た。ソフィアの顔を間近で見据え、ニールが頭を下げる。
「先ほどは、気分を害して悪かった」
「そんな。悪いのは兄ですわ。殿下が、謝ることではございません」
「俺が安易に本など出したから、君があの挿絵を目にしてしまった。もっと、考えて行動するべきだったよ」
ソフィアは息を呑む。
そもそも、悪いのは兄でもなく、意気地なしのソフィアなのかもしれない。
男だらけのサロンに参加した以上、どんなことが起ころうと、覚悟を持って居座るべきだった。
それなのに自分よりも身分の高いこの男は、悪いのはライアンでもソフィアでもなく自分だと言い謝っている。
(きっとこの方なら、素敵な公爵様になられるわ)
権力を振りかざさず、常に人と対等であろうとする領主こそ優れた領主だと、ソフィアは父から聞いたことがある。
「殿下。お願いですから、頭をお上げください」
ソフィアが微笑めば、ニールも表情を崩す。
「初めて見たな」
「え……?」
「君の、本当の微笑みを。今、初めて俺に心を開いてくれたね」
動揺するソフィアの前へと、ニールは一歩進み出る。
「バラ園に、ベンチがあるんだ。ついでだから、一緒に座って少し話をしよう。そもそも今日のサロンは、君と話がしたいがために開いたようなものだからね」
口の端を上げ、悪戯っぽい笑みを浮かべると、ニールはバラ園へと続くアーチ門へと先に歩み始めた。
「殿下……? サロンは、大丈夫ですの?」
「俺がいなくても白熱してるから、こっそり抜け出してきた」
ソフィアが驚けば、ニールは微笑を携えながら隣へと歩んで来た。ソフィアの顔を間近で見据え、ニールが頭を下げる。
「先ほどは、気分を害して悪かった」
「そんな。悪いのは兄ですわ。殿下が、謝ることではございません」
「俺が安易に本など出したから、君があの挿絵を目にしてしまった。もっと、考えて行動するべきだったよ」
ソフィアは息を呑む。
そもそも、悪いのは兄でもなく、意気地なしのソフィアなのかもしれない。
男だらけのサロンに参加した以上、どんなことが起ころうと、覚悟を持って居座るべきだった。
それなのに自分よりも身分の高いこの男は、悪いのはライアンでもソフィアでもなく自分だと言い謝っている。
(きっとこの方なら、素敵な公爵様になられるわ)
権力を振りかざさず、常に人と対等であろうとする領主こそ優れた領主だと、ソフィアは父から聞いたことがある。
「殿下。お願いですから、頭をお上げください」
ソフィアが微笑めば、ニールも表情を崩す。
「初めて見たな」
「え……?」
「君の、本当の微笑みを。今、初めて俺に心を開いてくれたね」
動揺するソフィアの前へと、ニールは一歩進み出る。
「バラ園に、ベンチがあるんだ。ついでだから、一緒に座って少し話をしよう。そもそも今日のサロンは、君と話がしたいがために開いたようなものだからね」
口の端を上げ、悪戯っぽい笑みを浮かべると、ニールはバラ園へと続くアーチ門へと先に歩み始めた。