冷酷な騎士団長が手放してくれません
後にわかったところによると、それはロイセン王国の隣国、ハイネル公国の支持組織によるテロ行為だった。


ロイセン王国とハイネル公国は、昔から仲が悪い。一昔前までは、年中戦争を繰り返していたほどに。


その頃は関係が落ち着いているものの、ロイセン王国のことを良く思っていないハイネル公国側の人間は、密かに暗躍していた。





「アーニャ、アーニャ……!」


一人ぼっちになったソフィアは、次々と爆発音が起こり火の粉が舞う王都の中を、泣きながら彷徨った。


行き交う人々は自分の身を守ることに精一杯で、幼い少女には見向きもしない。


「アーニャ、どこに行ったの……?」


空は灰色で、どんよりとしていた。立ち込める煙と人々の体で、視界も定まらない。


「ひっく、ひっく……」


彷徨い続けるうちに、いつしかソフィアは不思議な場所に来ていた。






無意識のうちに降りていた階段の向こうには、冷たい岩壁に囲まれた細い通路が伸びていた。ひどくじめじめとしてかび臭い。けれども、地上で続く騒乱からは離れているので、気持ちを落ち着かせることは出来た。


まるで、どこかの邸の秘密の地下通路みたい。幼いながらに、ソフィアはそんなことを思う。


そしてその通路の真ん中に、金色の髪をした少年が倒れているのを見つけた。


少年の息遣いが荒いのに気づき、ソフィアは駆け寄る。少年は全身にぐっしょりと汗を掻き、力尽きたように横たわっていた。ひどい熱だ。一体、何があったというのだろう?
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